NEX-VG10がようやく本気で使えるカメラになった。 フルハイビジョン、60p/60i/24p撮影がそのひとつ。VG10では30Pから生成した60iということで、実質30Pという状態だった。 次に動画時の読み出し範囲が拡大したことで、ワイド端撮影時の画角が16:9静止画撮影時と同等になった。これは画期的というよりも当たり前のことであり、今までVG10が動画撮影時に静止画撮影より画角が狭くなることがイレギュラーだったといえる。 そして何よりも大きな改善点はHDMI出力と本体のモニターが同時出力可能になったこと。実はこれも本来当たり前のことで、はいた関係にあったことの方がイレギュラーといえる。そしてVG10で強く望んだ拡大フォーカスやピーキングが標準装備された。これでこそビデオカメラのソニーである。 また、音声記録が5.1chサラウンドに対応したと同時に音声レベルのマニュアル設定が可能になった。これは同録には必要不可欠な機能だ。 他にも静止画のISO感度アップやRAWデータ記録なども特筆できるが、表には出ない部分では筐体やマウント台座、三脚取り付け部などが強化されたようだ。 残念ながら偽色によるモアレや感度ではNEX-FS100には及んでいない。またHDMI端子の強化は成されていないようなので自分で強化しなければならない。またVG10ではオリジナルのトリガーリモートを自作したが、VG20ではリモート機能が標準装備されている。さらにVG10ではHD専用だったが、VG20ではSDやAV出力にも対応した。 しかし総合的に見て非常によくできたカメラであることは確かだ。VG10がパイロット版、あるいはベーター版、機能評価版だとすれは、VG20はここにきてVGスタイルの完成版といって間違いないと思う。少なくとも私は絶賛する。 先日キヤノンから発表されたCINEMA EOSの内覧会の案内状が届いたが、ソニーのPMW-F3にしろパナのAF-105にしろ低価格といえども使用頻度を考えれば購入して保有するには高すぎる。NEX-FS100にしても価格はHDVクラスといいながら、私の会社での使用頻度はHDVやHDCAMが圧倒的に多い。HDVやHDCAMは自社保有してもデジタルシネマはやはりレンタルで使用すべきカメラだろう。 ところがNEX-VG10やNEX-VG20はちょっと違う。うまく使えばそれなりの映像が撮れて、なおかつ一眼レフ程度のコストである。こういったものはレンタルでは逆に馬鹿馬鹿しいものになる。もちろん様々なカスタマイズや改造も必要なためレンタルでは無理がある。ただ、NEX-VG20が安いからといって衝動買いはお勧めできない。 というのもこういったカメラではズームによるカメラワークではなく、決まった画角での画作りや移動ショットが重要になる。ロケハン、照明演出、レンズプランなどを十分に検討する必要があり、高倍率ズームによる現場対応には全く適していない。レンズプランでは画角だけではなくフォーカスの深度も重要だ。価格が安いだけにこういったことを十分に検討したうえで購入してもらいたいと思う。 それと、こういった小さなカメラを使う際の注意点を記しておこう。 カメラが小さいからといって、決して小型の軽量三脚はお勧めできない。写真の撮影なら軽い三脚で十分だ。写真のロケの際にアマチュアの方から「そんな細い三脚で大丈夫ですか?」と聞かれるほどの三脚を使っている。大きく重い三脚を持っていくよりは1本でも多くのレンズを持っていくほうが役に立つ。 しかし動画ではそうはいかない。特にHDで撮影したものを40インチ以上の大型液晶モニターで見ると風による揺れや、パンの操作のミスが嫌になるほどよく見えてしまう。 HDVなの場合は大抵VISION 3を使用するのだが、デジタル一眼の場合は最低でもVISION 3を使い、VPなどでは必ずヘビーデューティーの三段三脚に乗せたVIDEO 18 PLUSを使用している。(VISION 10や11ではカウンターが強すぎてバランスが取れない)動画の場合は小さなカメラほど大きな三脚を欲しがるといっても決して間違いではないと思う。しっかりした三脚と、滑らかなビデオヘッドは必需品である。 VG10ユーザーはわざわざ中国製のレンズがついたモデルは買わなくてよいだろう。ボディーのみで十分だ。しかしはじめてのユーザーには18-200mmのついたズームキットもお勧めできる。というのも18-200mmも発売から1年以上経ち、ズームのフィーリングもかなり改善されたように感じる。鏡筒は伸縮するものの、ズーム途中でのトルク変化もなくスムーズな手動ズームができるようになった。生産工程が熟したのか、作業員が上手になったためだろうか。VG10に付属していたものよりフィーリングが向上していた。 なお、注目の新型Aマウントアダプターだが、位相差検出による高速AFやハーフミラーによって撮像素子へのゴミの付着を防げると期待したが、動画をAFで撮る場合はアイリスが常時開放になってしまうらしい。やはりマニュアルフォーカスのニッコールやキヤノンFDレンズなどをサードパーティーのマウントアダプターを用いて装着するほうが良いようだ。なんといっても4倍の拡大フォーカスやピーキングはVG20のVG20たる機能である。 標準ズームとして3倍の18-55mmはよいレンズだが、新発売のEマウント専用マクロレンズはすばらしい。標準レンズとして最適な画角45度が得られ、等倍までエクステンションチューブやプロクサー無しで合焦できる。低分散ガラスや高度な設計によって大変滑らかなボケが得られる。 今後Eマウント専用レンズが新たに発売される。タイの洪水で大きな被害を被ったソニーだが、益々の躍進を期待したい。 なお注意点として互換バッテリーがNEX-VG20に対応していないことを記しておく。VG10で使えたものがVG20では使えないものがある。またCX560Vでは使えるのにVG20では使えないというものもある。 これはプリンターのインクと同様に本体の利益を抑えて消耗品で利益を上げるメーカーの営業戦略ということだろう。今しばらくは純正バッテリーに頼らざるを得ない。
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