2007年10月01日(月)
XDCAM EX/PMW-EX1
 最近業界でXDCAM EXが話題になっている。なかなか精悍な面構えである。製品名はPMW-EX1希望小売価格 840,000円(税抜価格 800,000円)ということで、ココにPDFのカタログがある。

 メーカーによると

フルHD 1/2型3CMOSセンサー搭載
ハンディタイプカムコーダーとして初めて1/2型フルHD(有効画素1920×1080ドット)3CMOSセンサーを搭載。CMOSには、弊社製・新開発“Exmor TM”CMOSイメージセンサーを採用しており、大型撮像素子により、高解像度、高感度、広いダイナミックレンジなど、ショルダーカムコーダーと同等クラスの描写力を実現しました。
SxS TM メモリーカードに長時間のHD記録
記録方式には高画質と長時間記録を両立するMPEG-HD圧縮方式、音声記録にはリニアPCMを採用。記録モードはHQモードとSPモードの二つのモードを搭載。HQモード(35Mbps)では1920×1080ドットのフルHD記録を実現。加えて1280×720ドットの記録も選択でき、16GBのSxS TM メモリーカードに約50分間のHD記録が可能。SPモード(25Mbps)では1440×1080ドットで約70分のHD記録が可能で、1枚のメモリーカードで、長時間記録を実現しました。
マルチフレームレート対応
シネマなどでよく使用される23.98p記録やさらに29.97p記録を搭載しました。これらは720pだけではなく1080pでもネイティブの記録が可能となっています。さらに59.94iと50iの切り替えも可能で、幅広いアプリケーションでの運用が可能となります。
スロー&クイックモーション
フィルムカメラの早回し(オーバークランク)撮影、遅回し(アンダークランク)撮影と同様のスロー&クイックモーション機能を搭載しました。720p時には60フレーム、1080p時には30フレームまでの間で、1フレーム刻みで可変可能。例えば720/23.98p記録時に撮像のフレームレートを60フレームに設定すると1/2.5倍速のスロー映像が記録可能です。
フジノン製光学14倍ズームレンズ装備
レンズにはフジノン製の光学14倍ズームレンズを採用しました。広角側の焦点距離は35mm換算で31.4mmを実現し、広い画角での撮影にも適しています。また、フォーカス/ズーム/アイリスの操作リングはショルダーカムコーダーと同様、レンズ筒上に独立して配置され、プロフェッショナルの操作性を継承しています。さらに、前後にスライドする新機構のフォーカスリングを採用し、オートフォーカス機能を装備するほか、フォーカス目盛りを装備したフルマニュアルフォーカスモードに切り替えることも可能です。


 ということだ。いたれりつくせりの仕様で、価格も80万、おそらく実勢価格は65万程度であろう。もちろん購入リストに加えるべきところだが・・・
どうしても気になることがある。記録用メモリーカードの価格だ。
“SxS PRO TM”(メモリーカード)『SBP-16』(容量:16GB)
希望小売価格:オープン価格
発売予定日:2007年11月下旬

ということで今のところ何とも言えないが、WEBを検索すると
店頭予想価格は8GBが6万円前後、16GBが11万円前後の見込み。なお、PMW-EX1には8GBのSxS PROメモリーカードが1枚付属する。
 ちなみにこの16GBメモリーで50分のHD記録が可能だ。もし16GBが11万であれば、40分当たりの記録コストは11万×4/5=8万8千となる。何故40分で考えるかといえば、HDCAMの記録時間がスモールカセットで40分だからだ。ではHDCAMの記録コストは、といえば40分テープの実売価格は1本約4000円。つまりHDCAMの場合はPMW-EX1の1/20ということになる。←ハードディスク等のストレージに落としてフォーマットすればよいと言われるかもしれないが、ロケ現場ではそんなことをしている暇は無い。で、実際にロケにいく場合は概ね1箱(10本)を用意する。それでも16GBの半額以下だ。多めに2箱(20本)用意してもまだHDCAMの方が安い。再利用できるメモリーではあるが、HDCAMテープ10本に相当する枚数なら400分を50分で割った枚数=8枚の16GBメモリーを持っていかなければならない。これだけで88万円ということになる。20本相当なら当然176万円だ。テープとは違って何十万回と再利用できるメモリーであってもメディアへの初期投資が大きすぎるのではないだろうか。
※検証した訳ではないため、未確認情報として記しておこう。
SxS TM メモリーカードだが、これはExpressCard規格に準拠ということである。とすれば、Transcend Informationグループ100%出資の日本法人トランセンドジャパン株式会社ExpressCard/34 Solid State Diskが使えないだろうか。これが使えればオンラインショップで32GBが¥69,700 (税込)で手に入る。16GBなら¥39,700 (税込)だ。実機にて検証する価値はあるだろう・・・と期待してしまうのだが、転送速度が余りにも違いすぎる。ミニバイクとF1ほどの差だ。およそ3倍の価格で6倍以上速い転送速度を持つSxS TM はもの凄いメモリーカードだということである。

※読み出し速度を比較
 SxS PRO: 読み出し速度 100MB/s
 トランセンドジャパン: Read up to 18MB/s, Write up to 8MB/s

 メモリーカードの価格はさておき、では実際にこのPMW-EX1にどんな仕事をさせればよいのだろうか?
 オーバークランクによるスロー&クイックモーション?
 マルチフレームレートによるキネコ素材?
 それならシネアルタやバリカムがあるではないか。ということだ。まさかこのPMW-EX1で1日の撮影費で20〜30万は取れないだろう。さらにメモリーに対する不安も否めない。CCDの画素抜けの原因と考えられる宇宙線の影響だ。高密度化したメモリーのセルの元素数を考えると高エネルギーの素粒子によってカタログツリーが破壊されるということも考えるべきだろう。まさかこの薄いメモリーカードが宇宙線対策を施してあるとは思えない。デジカメのメモリーカードのエラーで痛い目にあったことのある人ならやはり不安を拭い去ることはできない。
 とすれば、HD-SDI出力を用いてマルチキャメラ収録だろうか。最近プロテックなど数社から小型カムコーダーをEFP運用するためのドック(正式な名称ではない)が売り出されていて、プログラムタリーやリターンビデオにも対応できるそうだ。たしかにソニーはこういった周辺機器を現在発売していない。それよりも展示会のソニーブースにそういったサードパーティーの製品を使った状態で展示しているくらいだ。担当者曰く「こういう周辺機器をソニーが作るよりも開発から製品化まですべてお願いした方がコストも安くなります」だそうだ。たしかにそうだろう。現状の業務用ユーザーの数×今すぐHD化を望む業務用ユーザー数を考えると大手メーカーのラインには流せない。
 そこで考えることは業務用ユーザーの本格的なHD化の時期である。当然2011年のアナログ地上波=SDの停波時期までであることはほぼ決まっている。だがこれが来年か再来年か、はたまた停波寸前になるかは判らない。一般家庭にHD-DVDやBDが普及しまくるまでは放送や企業のイベント以外ではHD納品は難しいだろう。ただし、ディスクとは違った画期的なメディアが生まれれば話は変わる。もしかすると円盤以外のメディア(チップ)や、サーバーが普及するかもしれない。HD化については半年先も予測できないほど混沌としているのが現状である。

 さて、ここで私が望むHD製品の話に入る。
 現在ソニーが出している標準スタイルの放送用HDがHDCAMであり、業務用HDはXDCAM-HDである。HDVも業務用の部類に入るが今回は除外する。この業務用HDカムコーダー(XDCAM HD)に使用するメディアはBDと同じ種類の光磁気ディスクで、時間当たりのコストはDVCAMとさほど変わりは無い。だが、やはり回転ディスクという機構からメカが存在し、半導体メモリーのXDCAM-EXやP2CAMに比べると耐衝撃性に不安がある。それに完全なEFP仕様は無い。やはりこれもプロテックの製品に依存しなければプログラムタリーやリターンビデオを使うことが出来ない。
 そこで考えることはDXC-D55シリーズのHD化である。現在業務用SDスタンドアローンキャメラの最高峰として位置付けられるD55はトライアキシャルや光ファイバーなどにも対応している。しかし今後は業務用としてのHDスタンドアローンキャメラが文教用やCATV用として必ず必要になるはずだ。それに対応するものがDXC-D55のHDモデルHXC-55シリーズ←(私が勝手に言っているだけで、ソニーの思惑は判らない)である。もちろんCCUや光ファイバー、HD-SDIスイッチャーも含んだトータルシステムでの業務用HDである。おそらく収録据置機によるXDCAM HDディスク記録であろう。出来れば松下のP2CAM HPX-555と同様にキャメラ本体に16GBのSxSメモリーカードを4枚程度搭載できると嬉しいところだ。こういった製品が出てくるまではHD/EFPは東通やエキスプレス、コールツ、テークワンといった中継会社に協力していただき、自社機材によるHD収録はENGに限定してHDVやHDCAM一体型カムコーダーで我慢しておこう。そしてマルチキャメラEFPはSDで行うことが我々のみならず、顧客にとっても得策ではないだろうか。顧客をリードするのは良いが、先走ってしまえば誰もついて来ないのである。もちろん予算さえ計上していただければ私の会社も放送用HDキャメラや中継車を用いたハイビジョン収録を行っている。また近い将来、業務用HD/EFPシステムが発売される頃には一般家庭のHD環境も整備されているであろうし、必然的に市場から業務用HDシステムの発売が求められる。
 以前ある展示会でS社の技術者と話した時、「今しばらくはSD機材の延命に努めてください。」と仰っていた。まさにその通りだ。SDで稼いで、まともな業務用HDシステムが発売されれば一気に進む!当然4CAM/EFP/アイソレーション対応のフルシステムである。今ならHDC-1600/HDW-1800orHDW-M2000等で総額は億に達してしまう。とても業務用としては採算が取れない。業務用なら4CAM/EFPでHXC&XDCAMHDで総額2〜3000万程度が妥当なところだ。趣味で機材は購入できないのである。ここで改めてSDの延命を力強く語ってくれたS社の社員に心から感謝を申し上げる。

 PMW-EX1について否定的な意見でソニーには申し訳ないが、PMW-EX1に最も適した用途は水中撮影ではないだろうか。このキャメラをハウジングに入れればHDCAMに遜色ない画質で、もちろんHDVよりも高精細な水中映像が期待できる。メモリー1枚でフルHD50分ならタンク1本でお釣りがくる。3本も潜れば死んでしまう。16GBメモリー2〜3枚あれば十分だし、1枚でも休息中に十分ストレージに落とせるだろう。HVR-Z1Jのハウジングが市場から消えた今、強く希望するものはPMW-EX1用の水中ハウジングである。

(文責:株式会社千里ビデオサービス代表取締役笹邊幸人)


2007年10月1日 | 記事へ | コメント(5) |
| 映像制作・撮影技術 / NEX・HDV・HDCAM |
ご無沙汰しております。川合です。

やはり最適な用途は水中撮影ですよね。
映像業界全体を見渡せば、
メモリー収録に懐疑的な人が多いですが、
水中カメラマンに限って言えば、
なぜか皆わりと楽観的なんですよねー。

あとは、映画業界もそうですね。

どちらも一度にカメラをたくさん回すことがないので、
今現在のメモリー事情と相性が良いってことですね。

アーカイブをどうするのかという問題は依然として残ったままですが…。
水中、映画、そして報道さんに限っては大変便利なメモリーですね。特に報道さんはバイク便やマイクロを使わないでも公衆無線LAN等で映像データを転送できますね。
また、水中ではハウジングのレンズ解像度や浮遊塵の影響もありHDCAMと遜色の無い、というか取り回しの良さからHDCAM以上の映像が期待できますね。
有機ELテレビの発売など、やっぱりソニーは面白いです。
個人的に言うと映像機器はホワイト家電を作っているメーカーよりは電子機器専門に作っているメーカーに期待したいところです。
業務用HDについてはまさにSENRIさんのおっしゃる通りですね。今は自社でHDマルチカメラ収録機材を持てないです。が、新発売の家庭用カメラがほぼHDに移行した現在、それを買うのは新しくパパママになる人たちです。3年後には保育園の発表会でパパが持ってくるカメラは100%近くがHDになるでしょうねー。当然記録業者もDVD販売で通すことは難しくなってくると思います。この時にHD納品ができる環境になっているか・・・?ウチの会社では疑問です。(^^;

かわい君!
東京の喫茶店で「僕は新しいものが好きなんですー!」と言っていたのを思い出しました。(^^
こんばんは。
>今は自社でHDマルチカメラ収録機材を持てないです。
まだまともなものが出ていないので静観あるのみです。
まずは納品スタイルが決まって、ユーザーの環境が整うまで待ちましょう。
今回はまさに「急いては事を仕損じる」という状況ですね。
設備投資しても回収の見込みが立たない現状では溝に捨てるようなものです。
それから、今回の東京の現場ではお会いするのは難しそうです。かなり暇な状況にはなりそうですが、スケジュールが流動的です。
次の機会には群馬まで足を伸ばせるようにしますね。
HXC-100=トライアクスが使える業務用HDカメラシステム発売!!
HXCシリーズが出てきましたね!
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ニックネーム:SENRI
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