2008年04月06日(日)
春の上高地
 打ち合わせがスムーズに終わり、そのVPで使用する素材を「せっかく長野に来たのだから撮って帰ろう」ということになった。もちろん登山の準備など一切用意していない。ホエブスやコールマンといったストーブはおろか、雨具さえ準備していないのだ。靴は私が安全靴で他のスタッフはスニーカー。普通の人はこの時点で上高地などへは行かない。
 まず天候の判断。天気図や気象衛星の情報では絶対好天である。気温もほぼ氷点下。日帰りなら雨具は不要。雪が解けて靴が濡れる不安も少ない。防寒ということでは夜の松本を歩く程度のコートは所持している。それと一応ザックは車に積んでいた。これならコンビニで食料さえ調達すれば何とかなるだろうと、お気楽パーティーは出発した。

 車をターミナルに置いて釜トンネルを目指す。昔のトンネルは閉鎖され、一応近代化されたトンネルは「雪ん子」の歌さえ口ずさまなければ何の不安も無く大正池まで行ける。しかし以前のトンネルとは違い、一度入れば出口まで景色は見えない。もしかしたらこのトンネルにこそ「釜小僧」が居るかもしれない」と思ったりする。

 以前(2005年頃)は覆道付近からは写真のように梓川を見ることも出来たが、今は工事用のダンプカーの轟音に恐怖しなければならない。私が始めて上高地に来た30年ほど前は春の連休と秋の土日を除けば一般車も通行でき、自家用車で河童橋まで行くことが出来た。しかし自然保護の目的で今は通年一般車は通行不可だ。もちろんバイクも不可。バスやタクシーも4月後半から11月半ばまでしか通っていない。つまりGWまでは歩くしか無い。

 20分ほど歩くと出口に達する。新鮮な空気が嬉しい。そしてこのトンネルを抜けると春夏秋冬を問わず、別世界が待ち受けているのだ。

 トンネルを出ると風景は一気に冬。まだまだ雪がいっぱいだ。ちなみに私たちのパーティーが釜トンネルを通ったのは4月5日である。おもわず4日でなくて良かったと思う。

 トンネルを出てすぐに見える焼岳を撮影。大正の大噴火で泥流が梓川をせき止めて大正池が出来たことは有名。昭和37年には中尾峠の焼岳小屋を破壊したそうだ。その後登山規制されていた。私が北アルプスによく通った頃はまだ登山禁止だったが平成3年にこれが解除になっている。今は2455mの頂上(南峰)は立入禁止だが2393m(北峰)のピークまではOKということだ。今度は是非登ってみたい。

 道草をしたが目的の上高地を目指す。大正池までは工事用の車両がひっきりなしに通るので轢かれないように注意しなければならない。幸いこの現場の運転手さんたちには歩行者優先が徹底されているらしく、泥はねにも気を遣いながらゆっくりとすれ違ってくれた。

 今回の撮影機材はハイビジョンのHVR-Z1Jとビンテンのビジョン3、そしてセンチュリーのワイコンとフィルターが数枚。もしこれがHDCAMだったらこんなお気楽ロケは絶対出来ない。

 大正池ホテル(閉鎖中)を過ぎると重機が除雪作業をしていた。今年の上高地公園線開通は2008年4月24日ということだから、まもなく一般客でごった返すことになる。ウエストンが見た静かな上高地を楽しむなら今しかないだろう。

 除雪されていない道も堅雪になっていて芦峅やスノーシューも不要だ。もちろんラッセルの必要も無い。お気楽春山登山にはもってこいのコンディションである。スニーカーで来た木原も何の不安も無く春山を満喫している。ただし山はいつもこんなに優しい表情ではないことを認識しなければならない。若い頃から北アルプスを庭のように歩き、幾度もの単独行で山の辛酸を味わってきた私が「今日なら大丈夫」と判断した日だからここまで来れただけである。


 これが今回の撮影機材。ビンテンは手提げ部分をショルダーにして背中に背負って歩いた。もしビンテンのバッグを車に積んでいなければ背負うことは出来なかった。ということは三脚無しのロケは無意味となり中止だ。この青いバッグがあったからこそ出来た上高地ロケである。汗をかかないように上着を着たり、脱いだりしながら雪道を進んで目標の河童橋を目指す。着替えがないので、こまめな防寒調節は大切だ。

 我々を迎えてくれた河童橋。シーズンにはまず見ることが出来ない無人の釣り橋は明神様に良く似合う。

 早速河童橋の上からパノラマを撮影。誰も渡ってこないので揺れは皆無。シーズンに橋の上で三脚を使えば揺ればもちろんだが、観光客にも迷惑をかけることになる。今が一番いいときである。

 河童橋から望む穂高連峰だ。画像をクリックすると大きなサイズで開く。

 梓川の河原に下りて撮影。川の水は限りなく清らかだ。

 今回の日帰りロケで回したテープは約50分。まあまあの収穫である。最後は河童橋と穂高を入れて記念写真。いかにも軽装であることが顰蹙を買いそうだが、私の観天望気に免じて許していただきたい。重ねて言うが、GW前の上高地はまだまだ冬である。もしこのブログを読んで「行ってみたい」と思った方は十分な装備、服装、食料をもって出かけていただきたい。

 来たからには帰らねばならない。現場用のマグライトは常時携行しているが、雪洞など掘って楽しんでいては明日の仕事に穴が開く。日のあるうちに釜トンを抜けなければならない。と大正池ホテル付近まで戻ったところで風が凪いできた。もしかすると穂高が水面に映りそうな予感。

 すこしだけ下山を遅らせて、大正池でしばらく休憩。ただしじっと待っていると手がかじかんで来る。やはり上高地はまだ冬の続きなのだ。

 これがこの日のラストシーンだ。同じくクリックすれば大きな画像が開く。気楽に、というか無謀極まりない春の上高地ハイキングだったが、山の女神は我々に優しかった。今回収録した素材は次に作るVPのイメージ映像で使用する予定だ。つまりは今回のお気楽ハイクは遊びではない。無謀なようだが、私的には緻密に計算した結果であり、真剣勝負だった。それに対して女神が微笑んでくれただけである。あらためて女神とスタッフに感謝している。
(※写真は2005年のアーカイブを除いて全て制作技術部の木原が撮影したものである)

2008年4月6日 | 記事へ | コメント(0) |
| 旅の紀行 / 映像制作・撮影技術 / NEX・HDV・HDCAM |
コメントを記入  
お名前(必須)
 
パスワード:
 
メール:
 
URL:
 
非公開:  クッキーに保存: 
※非公開にチェックを入れると、管理者のみにコメントが届きます。
ブログの画面には表示されません。
captcha


※画像に表示されている文字を入力してください(半角・大文字/小文字の区別なし)。
文字が読みづらい場合はこちらをクリックしてください。
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク
 

PHOTOHITOブログパーツ


ニックネーム:SENRI
都道府県:関西・大阪府
映像制作/撮影技術会社
(株)千里ビデオサービス
代表取締役&
北八ヶ岳麦草ヒュッテHPの管理人です。よろしくお願いします。
色々出ます

»くわしく見る

バイオグラフィー