NEX-VG10はNDフィルターを内蔵していないのが正しい!
先般発売されたソニーのNEX-VG10だが、巷では動画撮影カメラで有りながらNDフィルター(光量調整用ニュートラルデンシティーフィルター)を内蔵していないのは具合が悪い、不便と評判が悪い。確かに2/3吋や1/2吋、1/3吋撮像素子のビデオカメラには1/64、1/16、1/8などのNDフィルターが内蔵されていてワンタッチで切り替えることが出来る。またCCフィルターも内蔵している。屋外から屋内、太陽光から電灯光など、現場に合えあせてカメラマン、VEが切り替える。これらのフィルターはアクセサリーではなく、ビデオカメラの必需品である。
では何故ハンディーカムとして売り出されたNEX-VG10にNDフィルターが内蔵されないのか?【光量が強いときはアイリスを閉じてシャッタースピードを上げればよい?】アイリスを絞ると被写界深度が深くなり、せっかくの大型撮像素子の浅いフォーカスが台無しになり、絞りすぎると回折によるボケや集光力の減少による解像力の低下が起こる。またシャッター速度を1/60秒より早くすれば動画の動きがパラパラとしたものになりマルチストロボ状態になる。60iで記録する場合フィルムカメラの開角度で見ると1/60秒では180度、1/50秒で240度、1/40で300度、1/30秒では360度となり、適切なシャッタースピードを設定しなければならない。
つまりNEX-VG10ではアイリス値は画作りに合わせた被写界深度で決まり、シャッタースピードはむやみやたらに変えてはいけない。それで露出オーバーになる場合はかならずNDフィルターや照明で調節する。
ということはNDフィルターは必要不可欠であり、それが内蔵されていないのは大変不便なことだ。
ではここで写真を見ていただきたい。
これはNEX-VG10のレンズを外したマウント部分。APS-Cサイズ(35mmフルサイズの約半分)の撮像素子が見える。もしこの前に3種類のNDフィルターと素通しフィルターを取り付けたターレットを取り付ければどうなるだろう。ターレットの直径は約10cm程になり、それと回転機構を組み込むととんでもない大きさになってしまう。また、鏡面になった撮像素子と平行にガラスフィルターが並ぶことは光学的にもゴーストやフレアといった弊害も生じる。NEX-VG10に限らず、キヤノンのEOSや松下のGH-1、GH-2、そしてソニーのNEXやアルファなどでは撮影者がシーンに合わせてレンズのフロントにNDフィルターを装着することが望ましい。我々のように4×4吋や3×3吋のNDは理想だが、汎用の丸型フィルターでなんら問題ない。ND-2とND-4、ND-8は用意したい。もしくはND-4とND-16でもよい。足りない時は2枚重ねて使ってもよい。また、液晶を分解したことのある人は知っていると思うが、表面のフィルムの向きを変えると明暗が変化する。昔8mmフィルムで使ったフェーダーのように偏光フィルターを2枚重ね合わせる方法も光量調整の方法として使えるが、偏光の影響やフィルターの特性からニュートラルな色合いが出るかは状況によって異なるだろう。
今回の表題【NEX-VG10はNDフィルターを内蔵していないのが正しい!】は検索キーワードではなく、NEX-VG10の悪評に対する私の見解である。メーカーにも「何故NDフィルターを内蔵しなかったか」についてその理由をわかりやすくユーザーに伝えてほしい。しかし将来的には電気によって光の透過率を調整できるフィルムなどが実用化されるだろう。NDだけではなく、RGB各色毎に調整できれば電子CCフィルターにもなる。最近の科学技術の進歩する速さを考えれば決して夢ではないと思う。もしかすれば既に実用化されているかも知れない。
余談だが、量販店の販売員に動画の露出調整はアイリスとシャッター速度で行うと思っている人がいることは残念なことだ。さらに民生機のビデオカメラに【オートシャッター】機能が有り、さらにシャッター速度を可変させて適正露出を決めるモード【絞り優先オート】が存在することも困ったものである。
まず1枚、1/16(4絞り)のNDフィルターは揃えたい。左が16mm用のΦ49mm、右が18-200mm用のΦ67mm。 ケンコー光学ショップ 楽天市場店で安く入手できる。
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